91Days12話感想
「かいくぐり」は漢字にすると掻い潜り、意味としては「危険のある場所をうまく通り抜ける」になります。
汚れつちまつた空をかいくぐってたどり着いた先は、海でした。
同時期に放送していたラブライブ!サンシャイン!の海とは似ても似つかない、乾燥した海で全ては終わりました。
7年前は雪の上に、そして今回砂の上に足跡が残っていたのは粋ですね。
7年間をむだごとと切り捨てなかったネロが生き残るのも納得感がある12話、感想です。
91Days12話「汚れた空をかいくぐり」感想
登場人物
アヴィリオ・ブルーノ(アンジェロ・ラグーザ)
ずっと死にたかったのかと思ってました。復讐の先に何か見えるものがあるかもしれないなんて期待をしていたんですね。アンジェロはずっとあの時のまま、子どもでした。
ネロ・ヴァネッティ
全てを失って、それでも去っていくネロはむしろ身軽そうに見えました。ガラッシアの追手とすれ違い、その内に命を落とすことになるのすら納得済に思えます。
感想
フロリダの広告
アンジェロが軟禁されていた部屋に置いてあった雑誌にあったフロリダの広告は、コルテオがかつてファンゴを殺す前に映った看板と同じでしょう。1920年代のフロリダと言えば土地バブルの真っただ中、みんなが憧れるビーチ…だったのですが、改めて調べなおしたら1928年には既にバブルも弾けてますね。かつて栄華を極めた地というのが、なんともこのアニメらしいように思えます。そしてそんな広告を見て「海が見たい」と思ったアンジェロも、非常に彼らしいです。
食べないアンジェロ
スクーザのところでも、ネロに連れられ4話のような旅をする中でもアンジェロは食べ物を口にしません。4話の時と、今回の2人の関係はまるで対照的です。一緒にご飯を食べないとなるとここまで冷めた感じになるんですね。
復讐の先に何もなかったアンジェロは早く死んで家族の元へ行きたいと考えていたはずです。その家族の中にコルテオも当然含まれているわけですから、チェロットの怒りもアンジェロにはいまいち届きませんでした。
あの時殺してほしかった
これまたキャンプの時の焼き直しをしながら、アンジェロは初めてネロに自分の気持ちを吐露します。7年間、生き残ってしまったがために抜け殻になり、手紙によって復讐という泥沼を進まなければならなかったアンジェロにとってはネロの見逃しが温情に感じられませんでした。むしろいっそう恨みが募ったといいますか。
逆にネロにとってはアンジェロを殺せなかったからこその7年間があり、そして父に認められました。あの時アンジェロを殺していても同じだったのかもしれませんが、幼少期の話を聞くにサボり癖のあったネロが、仕事へ真剣になったのはこの一件があったからではないでしょうか。
そして言葉で説明しなくても、眠るアンジェロとそれを見るネロの描写で、結末をつけるにはネロがアンジェロを殺してやるしか道がないと思わせるのは流石です。
食べるアンジェロ
ネロが自分を殺してくれることを悟ってか、アンジェロは食べ物を口にし始めます。久々に同じテーブルで食事を共にし、雰囲気も以前の2人に戻ります。ひきこもりの弟が久々に口を聞いてくれた、みたいな感じでした。
7年前の続き
汚れた空をかいくぐってたどり着いた海ですが、フロリダの海とは似ても似つきません。そこを歩きながら、アンジェロはネロを殺さなかった理由を話しました。それを聞いて引き金を引いてやるネロ。完璧とも思える最期だったように思えます。
結局最後までアンジェロは復讐鬼になれませんでしたし、だからこそアヴィリオではなくアンジェロとして死んでいくことができました。家から逃げ出し、森へ駆け込むアンジェロを7年という月日を経てようやくネロは撃ってやれたわけです。「今ならあの時のガキ、殺せるよな」と。周りを散々に巻き込んでいった割には、救済的な死でした。
しかしそれはかつてコルテオが読んでいた『荒地』で暗示されていたような気もするので唐突な感じはしません。偶然かもしれませんがエリオットの『荒地』でも最後は岸辺に座って荒地を背にします。そしてダンテから「彼は浄火の中へ身を隠した」と引用があります。海辺にて、荒地となったローレスを背後に、アンジェロは浄火=煉獄へと消えていった…とするのはこじつけがすぎるでしょうか。
そもそもが引用を多用する『荒地』と、様々なギャング映画などの要素を盛り込んだ91Daysは重なる部分もあり、もっとまじめに考察したら何かわかるのかなとも、最終話になって今さら思いました。
12話、総集編も入れると全13話、見てきて良かったなと思えるアニメでした。食べ物の印象が強いです。
感想は以上です、ありがとうございました。