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アニメ感想・考察ブログ

十二夜感想

またもアニメではないですが、観てきたので感想です。

 

新潟シェイクスピアカンパニー&シアター代官山プロデュース

十二夜」感想@シアター代官山

 シェイクスピアはいくつか観ていますが、十二夜は初めてです。脚本も読んだことがありません。

イギリス版とりかへチャタテムシばや物語と言えばいいのか、花ざかりの君たちへと言えばいいのか……こういうジェンダーロールを取り扱った作品は現代だからこそ効いてくるものがありますね。

シェイクスピアは我らの同時代人」の言葉通り、時代が移り変わってもシェイクスピアの劇には何か訴えかけるものがあるのだなと感じた公演でした。

役者さんも(失礼な言い方ですが)初々しい感じもあり非常に楽しい舞台でした。

やっぱり喜劇はいいですよねえ。

 

しかしヴァイオラ(シザーリオ)はかわいいですね!恋をしてしまいそうだった。

今でこそヴァイオラ役は女性が演じていますが、シェイクスピアの時代は女役も男性であることが普通でした。

劇中でもオーシーノがヴァイオラを指して「まるで演劇で女性役をやる美少年のよう」と評していましたね。

(そこらへん「恋におちたシェイクスピア」という映画が詳しいです)

話が逸れましたが、つまりシェイクスピアは女役を男性がやると知っていてこの演劇を書いたわけです。

となると男性が、「男装した女性」の役を演じることとなり、ますます倒錯した感じになっていきますね。同性愛の傾向があったシェイクスピアらしいのか何なのか。

(余談ではありますが、シェイクスピアが同性への愛を語った「ソネット集」には、ブラックレディという女性が後半登場します。彼女とオリヴィアは何となく被るところがあるような気もします。だからなんだというわけではないのですが、「ソネット集」はすごく良いです。もっと有名になってほしい)

 

さて同性愛とのことで、十二夜にはそう見えなくもない場面がいくつも出てきます。

具体的にはアントーニオとセバスチャンのくだりでしょうか。

アントーニオは友情と敬愛でもってセバスチャンに接していますが、その愛の激しさは恋愛の情とも引けをとりません。

あの何度も抱きしめあう演出はこの公演独自のものなのでしょうか。あれがますます「えっこいつらって…」感を出している気がします。

アントーニオ自身は1人だけ少年漫画の主人公みたいで非常に好感が持てました。それだけに救われない最後は同情をひきます。

オリヴィアの恋もまた、ヴァイオラの女性的な部分に惹かれたと考えれば同性愛的ですし、オーシーノの、シザーリオに対する想いも同様です。小姓としてシザーリオを寵愛し傍に置くのは、内心で惹かれているからでしょう。しかし「シザーリオは男性である」という前提がオーシーノの気持ちを恋とは自覚させません。そう考えるとオーシーノは「恋が芽生えるのは男女間であるべき」という価値観に縛られていると言えますね。劇全体としても決して同性愛を容認する作りにはなっていません。書かれた時代を考えれば当然ですが。

それでも女というもの、男というものが明確に表現されていた当時において「女の恋も男の恋もわかります」とヴァイオラに語らせたシェイクスピアはすごいですよね。

 

恋のごたごたとは別に、道化とトービーが劇中ですごくいい役回りでした。

シェイクスピアに出てくる道化は「リア王」をはじめ大好きなのですが、十二夜の道化も良かったです。世俗から超越しているような道化が多い中でも、十二夜版は若干の人間臭さがありますよね。

劇前半で出てきたセリフを最後に繰り返し、因果がまわったのだと言う展開は、この劇自体が1つの世界を構築しているようでした。

 

 道化とトービーの掛け合いは都都逸を聞いているみたいで耳に心地いいテンポでした。

今回の公演では役者さんもみなさん、言葉を丁重に扱っている感じがあり好感が持てます。

言葉の魔術師シェイクスピアの劇ということで意識されたのでしょうか。

 

以上、とりとめがなくなってしまいましたが感想です。